飲食品を守るプロの技術

  • 風味や色を守るには⇒ 固体や液体に最も溶けにくい高純度の不活性ガス(窒素ガス)で他のガス(二酸化炭素、アルゴン、酸素)を置換する
  • 酸化を抑制するため⇒ 酸素との接触を避ける。
  • カビを防止のため⇒ 99.9%以上の不活性ガスで置換し酸素を1%未満に
  • 細菌による腐食や防虫のため⇒ 高純度炭酸ガスで酸素を置換

 

よくアルゴンは重くボトルに入れるとワインの液面に浮遊するため、ワインの酸化防止に良いと都市伝説ように広まっていますが、実際にはアルゴンは空気全体よりは確かに重いのですが、二酸化炭素より遥かに軽く、もしボトル内で空気中の成分が層をつくり、重さにより入れ変わるなら、液面から順に二酸化炭素、アルゴン、酸素と層ができ、この3種類のガスは液体に溶けやすいため順次ワインに吸収されてしまいます。

そして最初に溶ける二酸化炭素は発泡性に加え酸味、苦みが増しますし、アルゴンは固体や液体に溶けやすく、酸素を奪う性質(熟成の逆)があるため、用途には注意が必要です。

たしかに富士山頂では引力の影響で各空気成分が比重により層をなすかもしれませんが、人の暮らす海抜レベル、ましてボトル内や部屋で空気の各成分が重さで層をなすことはとても考えにくく、もしもそれを信じるならば、私達は密閉された部屋に立っていると、空気中成分の78%を占める窒素しか吸引できず、窒息してしまいます。

 

酸化やカビ抑制にはボトル内の酸素濃度をどれだけ減少させるか?、

また風味を維持するためには固体や液体に溶けやすいガスをどれだけ減少させるか?が重要と思われます。

そのため食品の製造や包装において風味を維持ししながらの酸化防止には固体や液体に溶けにくい窒素ガスやその混合ガスが長年に渡り使用されています。

 

各ガスの使用用途 (日本)

炭酸ガスや窒素ガスは食品や医療でも使用されています。

食品における窒素と炭酸ガスの用途

実際に食品業界では飲食品の酸化やカビ抑制には食品用窒素ガスや食品用炭酸ガスが、またオリジナルの香りを維持のためには液体や固体に最も溶けにくい食品用窒素ガスを充填しています。酸素ガスは肉を赤紅色に発色させるために使用されています。

代表的な食材への封入ガス利用
食品名 窒素 炭酸ガス 使用目的
(N2) (CO2)
生肉類 微生物の抑制
魚切り身 微生物の抑制
生野菜 鮮度保持、微生物の抑制
かまぼこ 細菌・カビの発育防止
削り節 酸化防止・香気保存
ハム・フランクフルト 脂肪分解・酸化の防止、微生物の抑制
ドライミルク 酸化防止
チーズ 脂肪分解・酸化の防止、微生物の抑制
油菓子 脂肪分解・酸化の防止
カステラ・スポンジケーキ カビの発育防止
ピーナッツ・アーモンド 脂肪分解・酸化の防止
ワイン 酸化防止・香気逸散防止、CO2は炭酸化しても良い場合
酸化防止・香気逸散防止、CO2は炭酸化しても良い場合
コーヒー・紅茶 香気逸散防止・CO2は酸味・苦みが増しても良い場合に有効
日本茶 香気逸散防止、ビタミン損失の防止
清涼飲料 香気逸散防止、CO2は炭酸化しても良い場合
粉末ジュース 香気逸散防止、ビタミン損失の防止